2012/07/24 - 20:46
【ネタバレ含む】映画『おおかみこどもの雨と雪』
本日は映画『おおかみこどもの雨と雪』感想。ネタバレ含みなのでご容赦を願います。でもネタ知ってたほうが映画は楽しめるってばっちゃが言ってたよ! いや、もちろん自己責任でどうぞ。
本作は主人公の花が“おおかみおとこ”と愛し合い、二人の子供をもうけるところから始まります。すなわち細田守監督の前作『サマーウォーズ』が「結婚前」を描いたのに対して「結婚後」を描いた作品ですが、これを「ジブリ系のやらない一歩先を描いた」と評価する向きがありました。
昨今の作品にしては珍しく、親の子離れ・子の親離れまで組み込んであるのが好感。ジブリ系のやらない一歩先を丹念に描ききったのも、丁寧な組み立てあったればこそで、成る程、こりゃおっさんクラスタが手放しで絶賛するのも頷けるわ!と。難点は独り者にゃ少々辛いかなというぐらいか、ぐぬぬ
— 蝉丸P/西日本さん (@semimaruP) 7月 23, 2012
序盤のハイライトはおおかみおとこと花のラブシーンですが、その時は何とおおかみおとこがおおかみの姿である…! 「そのシーンで何かに目覚めた人が出たらどうするの((((;゚Д゚)))))」と心配する変態が私だけであることを祈る。
さて、子供ができてこれから…というところで父である“おおかみおとこ”が突然の死に見舞われ、物語が動き始めます。
すなわち、花は女手ひとつで二人の赤ん坊、雨と雪を育てることになるわけですが。「どうかするとすぐおおかみに変身する」子供二人を抱えてよくやったものです。何しろ“おおかみこども”だから、病気になっても医者に見せるわけに行かず。あれはリアルでやったら親か子のどちらかが死んでてもおかしくないぞ、と冷や冷やしながら前半を観ていました。
子供を隠しながら生活する花は不審感を持たれたようで、「子供を見せなさい」と自治体職員らしき人物が訪ねてくるシーンがありました。花は強引にそれを断りますが、その時に職員が「虐待やネグレクトを疑われてもおかしくないですよ!」という台詞を口にします。実際、花の性格が性格だったら、虐待に至ってもおかしくない状況。そういう意味でも「死んでてもおかしくないぞ」です。
この辺りはアニメならではの演出・ファンタジー性ということで受け入れられるかも知れませんが、ひょっとするとリアリティが失われて冷める観客もいるのではないかとも思います。でもこのファンタジー性がないと後半が活きてきませんねぇ…
ですが、子育てのバタバタは自分の子供時代や子育て経験を思い出して懐かしむ人も多そうです。ちなみに、雪が何かリアクションを見せるたびに後ろの席でクスクス笑うおばさまがいらっしゃったのですが。何度もクスクス言っててけっこう鬱陶しかったです(笑)。まぁ楽しめていたのなら何よりですね。
後半は、子供たちが「人間か、おおかみか」どちらでも選べるようにと田舎での生活に移る所が描かれます。
人目を避けて生活するはずが、次第に地元の人達との交流ができていく、肯定的な描写で一安心。
雪が小学校に入ることで後半が本格的に動きますが、この小学校でのエピソードも親近感があるものが多くて秀逸ではないかと思います。「あるある」みたいな反応したくなるところもあるのではないかと。
この物語は雪と雨の二人の動きが描かれますが、「人前でおおかみにならない」約束を破って、泣きながら母に謝るシーンは雪のシナリオのハイライトとの一つと言えますね。このシーンもそうですが描かれているのはとにかく日常どこかにきっとある光景です。
雪は人間として生き、雨はおおかみとして生きる決断をするという、立場の違いが明確になり、二人はケンカまでしますが、ここからが「親離れ」の始まり。
雨は嵐の中、母の花に何も告げず家を出ていきますが、この雨の行動には疑問があります。
「嵐の中を出ていけば、自分を追ってくる母が危険にさらされる」ことが分からないようなキャラクターだとは思えないので、不思議なのです。彼がどうしてわざわざ嵐の中を出ていったのか。
結局のところ、この別れを境に雨は人との接触を絶っておおかみとして生きていくことになりますが、花の元を去ろうとする雨に花は「私、まだあなたに何もしてあげてない」と叫びます。
まさに母の台詞だなぁ…と感じ入りました。相手が男の子だから余計にそう感じるのかも知れません。それでも黙って立ち去る雨の行動も、やっぱり男の子という感じです。
ビジュアル面でも色々書けることはありますが、まぁこれは「観れば分かるだろう」ということで割愛(訳:書き疲れた)。